花を生けること

 

私にとって、花を生けることは、

精神統一であり、よろこび。

 

花の色、形、配置を見ながら

はさみをとる。

 

花ばさみ特有の、声高く、芯の入った

パチン

パチン

と響く音が、

ひたすらに花に向き合う

無の世界へと導いてくれる。

 

この音は、私の記憶に深く根差している。

 

母は、母屋の玄関の土間に、

畑や庭の花を摘んできては

よく生けていた。

 

パチン。

 

パチン。

 

静かな土間に響く、花ばさみの音。

 

その音を背に、静かに、花に向き合う母。

 

どんな想いで、母屋の玄関に花を生けていたのだろう。

 

母にとっても、花を生けることは、

無になれる時間であり、

日々の暮らしの中に、季節を取り入れるよろこび。

 

母が教えてくれたよろこびのひとつです。