メールの推敲という仕事

 

いつもの上司とのスカイプミーティング。

 

上司が

 

「これから画面、共有するから」

 

と言って、自分のメール画面を共有した。

 

あぁ、このメール。

 

返信するのに神経を使うメールだ。

 

上司は、センシティブなメールの返信には、

必ずメール画面を共有しながら、返事を書く。

 

「他に書き足すことはないか?」

 

「これでいいか?」

 

確認しながら、返事を書く。

 

「これも書いておいた方がいいのでは?」

 

「こっちの表現ではどうですか?」

 

私も、一緒に返事を推敲する。

 

意見が分かれるところは、話し合い、

そうしてひとつひとつの表現を丁寧に確認しながら、

お互いに納得のいく文章ができて、初めて

上司は、送信ボタンを押す。

 

私は、この作業が好きだ。

 

今の上司の前の上司は、

どこに発火点があるかわからない人だった。

 

しょっちゅう激怒していた。

 

そんなわけだから、

ちょっと不条理な内容のメールや

辛辣な表現のメールを受け取ったときは

ものすごい剣幕で、返事を書いていた。

 

ただ、必ず、私にメールをチェックさせた。

 

ものすごい剣幕で書いているので、

表現もものすごく辛辣だ。

 

それを一緒に画面を見ながら

上司の言いたいことは残しつつ

ひとつひとつ丁寧な表現を提案していく。

 

そうして、推敲しているうちに

上司の剣幕も次第に落ち着いてくる。

 

上司は、推敲を重ねたメールを何度か読み直し、

ようやく送信ボタンを押す。

 

最初は、ものすごい剣幕で書いていたり

なんて書いたらいいのかわからなかったりしたものが

最後は、納得したものを送信できるようになる。

 

一緒にそういうものをつくる。

それがうれしい。

 

考えてみると

10年近く、こうして上司のメールを

一緒に推敲してきた。

 

いつの間にか

私の好きな仕事のひとつになっている。