しあわせな一日

 

今日は、イスラム教のラマダン明けのお祭りの日で

オフィスはお休み。

 

母が、焼き穴子と菖蒲の花、お野菜を持って

お昼頃に来てくれた。

 

毎年、この時期になると

母は必ず菖蒲の花を届けてくれる。

 

近所のおじいさんが

自宅で栽培しているたくさんの菖蒲を

お福分けしてくれるのだ。

 

母は、菖蒲のまっすぐ天に向かって咲く様が

好きなのだと言う。

 

確かに、たおやかな女性的なアヤメやカキツバタとは違い、

すっくと天に伸びる様には、清々しい凛々しさがある。

 

菖蒲を生けてくれながら

母が言う。

 

「最近、お花を生けるのも

しんどくなってきて」

 

え?

あの花好きの母が

お花を生けるのがしんどい?

 

「お料理を作るのもしんどくて」

 

えぇ!?

料理好きの母が、お料理を作るのも

しんどいなんて。

 

そう言えば、いつも来るときは、

こまごまとお料理を作って持ってきてくれるのが

今日は、アジの酢漬け1品だった。

 

でも

 

「ちょうど出かける前に

〇〇さんが、沖合で獲れた穴子

炭火焼をくれたから」

 

わぁ!これこれ!

 

穴子を炭火で甘辛く焼いたの。

 

それが甘辛いだけじゃなくて

お酒の風味と味がたっぷり染み込んだ穴子

 

この素晴らしく美味しい穴子

私が叔母に送るのに多めに作っていた

鶏のさっぱり煮をメインに

お昼ご飯にした。

 

はぁ~美味し~♡

 

二人で美味しくお昼ご飯を食べてから

マッサージをしながら 

しばらくおしゃべりしてから

母は帰っていった。

 

そろそろ着いた頃かな、と思って電話をすると、

菖蒲をくれたおじいさんにお寿司を届けて

帰ってきた母が電話に出た。

 

「△△さんにお礼に行ったらね、

 

『もう年やし、この菖蒲の世話

ようせんようになったら、

どうしようかと思ってねぇ』

 

って言っててね」

 

おじいさんは、今85歳。

 

去年ぐらいから、

母に何度となく、

そんなことをつぶやいていたのだそう。

 

自宅の庭で、手塩にかけて育ててきた

菖蒲園ができそうなくらいのたくさんの菖蒲の花たち。

 

「お母さん、お庭で菖蒲、育ててみようかな」

 

え!?

 

「お庭に菖蒲園作るって夢ができたら

なんかすごくうれしくなってきて。

こんなの初めてよ」

 

ほんと!?

 

「△△さん、もしも

本当によう育てやんと思ったら

少し分けてもらってもいいですか?

 

△△さんに育て方、教えてもらいながら

やってみようと思います。」

 

母がそう言うと、

おじいさんは、

たいそうよろこんでくれたのだそう。

 

母の声が弾んでいる。

 

とてもうれしそうだ。

 

私もすごくうれしかった。

 

さっき、

花を生けるのもしんどい

そう言っていた母は、

もうどこにもいなかった。

 

 

人は、周りの人に

支えられて生きている。

 

 

今日のしあわせな一日を

 

本当に

 

ありがとう。

 

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