ひとつあげようか?

 

「ひとつあげようか?」

 

96歳の叔母が言う。

 

何をくれるって言ってるのかな?

 

そう思って叔母の方を見てみると、

お彼岸のお供えで届いた小倉山荘の

おかきの箱が入っていた紙袋に

百人一首が書かれていた。

 

2つの側面に書かれているから

ひとつの側面をあげようか?

 

そう言っているのだ。

 

一瞬、う~ん私使うかな。。と思ったけれど、

 

叔母は、こういうのを大事にするんだなぁ

 

「うん、ひとつもらおうかな」

 

そう言うと、

 

「そうか」

 

と言って、ほとんど力の入らない右手で

はさみを持って、休み休みしながら

紙袋の2つの側面を切ってくれた。

 

字が見えにくくなっていたから、

最近は新聞も読まなくなっていたのに

今は切り取った百人一首

楽しそうに詠んでいる。

 

「このうた、おもしろいなぁ」

 

「これは、西山のおばちゃん、よう言うてたなぁ」

 

そんなことを言いながら

叔母が声に出して詠んでいると、

叔父も来て、

 

「それ、もう一回言うて」

 

って、耳を傾けている。

 

叔母も叔父も、こういうのすごく好きなんだなぁ。

 

「〇〇ちゃんとひとつずつしたんやで」

 

叔母と叔父が好きなものを

私もひとつ分けてもらって

本当によかったと思った。

 

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                   叔母がくれた百人一首と裏山で見つけた栗☆