お盆

 

95歳の叔母の家で、お盆の用意。

 

お膳をつくって、お野菜や果物、

お花やお供えを供える。

 

そこへ叔母が、

 

「あの灯篭つけようか」

 

と。

 

灯篭?

 

あ!もしかして

あのくるくる回る

灯篭のこと?

 

私の実家には、廻灯篭がなくて

夏の夜に、廻灯篭を目にするのは

いつも親戚の家に泊まりに行っている

ワクワクする気持ちのときだった。

 

親戚の家に泊まりに行っているときだけは

夜更かしが許される。

 

それでもいよいよみんな

そろそろ寝ようか、となって、

蚊取り線香の香りがする部屋の電気を消す。

 

するとそこに、ピンクや水色や黄色の灯りが

くるくると廻りながら、部屋の中をぼんやりと照らし出すのだ。

 

そんなぼんやりとした色とりどりの灯りを見ながら

心地よい眠気に身をゆだねて、いつの間にか眠りにつく。

 

あの廻灯篭がまた見られる。

 

出そう出そう!

 

叔母と二人で記憶を頼りに

組み立て始めた。

 

が、一向にそれらしい形になってこない。

 

うちの人呼んできてよ。

 

叔母が言うので、叔父に加勢を頼む。

 

もうずいぶんの間、出していなかった廻灯篭。

 

最近、記憶が薄れていく叔父だが

叔父の手にかかると、

いつの間にか、灯篭の形になっていた。

 

電気をつけてみると、

まあるい灯りが

撫子や菊の和紙の絵を透かしながら

ゆっくりと廻り始めた。

 

お盆という

家族や親せきが集まる機会をつくった

昔の人の想いに、改めて感謝したくなった。