ご陽気George

 

マサイ族の人には、マサイの名前があるが

英語の名前もある。

GeorgeやEdwardみたいに。

学校で呼ばれるのは、英語名でなのだそう。

 

今回のサファリのガイドをしてくれたGeorge.

 

こわいもの知らずの

なんともご陽気なガイドである。

 

動物たちの居場所を求めて、

サバンナをランドクルーザー

駆け抜ける。

 

ランドクルーザー

とは、よく言ったものだ。

 

時には、水の中を

時には、急な斜面を

時には、ものすごい凸凹道を

ものともせずに、

ジャブジャブ、ガタンゴトン

走り抜ける。

 

凸凹道で、前後左右に身体が揺れる度に

 

”アフリカン マッサージ♫"

 

と、おもしろそうに言う。

 

ものすごく体が揺れるほど

 

”グッド マッサージ♫"

 

と言って笑う。

 

そんなご陽気な調子で

こっちに向かってくるライオンの親子の

至近距離にジープを止めた。

 

え!?ちょっと近すぎない!?

 

ライオンのお母さんが、近づいてくる。

 

あと数歩もすれば、窓ガラスのない

私の座席にいつでも飛びかかれる距離だ。

 

ふと、お母さんライオンが立ち止まった。

 

車を出して!

 

思わず言うと、涼しい顔のGeorgeが

 

「怖いのか?」

 

と聞く。

 

もちろんよ!いつでも飛びかかれる距離じゃない!

 

そんな私の小声の叫びを

ふふん、とあざ笑うかのように

 

「俺はこわくない」

 

と、自信たっぷりに言う。

 

なんでも、マサイ族の成人の儀式に

ライオンと闘う

というのがあるらしい。

 

動物保護のために

10年ほど前に、その風習はなくなったのだそうだが、

それよりも前に成人を迎えたGeorgeは、

ライオンと闘ったらしい。

 

その時に、ライオンに噛まれた傷だ、と言って

誇らしげに、ひじに残る傷跡を見せてくれた。

 

へー

 

...って、感心してる場合じゃない!

 

それはわかったから、車出して!

 

一向に気にも留めないGeorgeは、

 

「心配ない。俺があなたを護る」

 

って、カッコイイこと言ってくれる。

 

けど、運転席のあなたが、後部座席の私を

どうやって護るのよ!?

 

あなたが気づいた時には、

私はもう、ガブリとかぶられてるわよ。

 

私たちが、

そんな漫才のようなやりとりをしている間に

ライオンの親子は、何食わぬ顔で

ジープの前を通り過ぎていた。

 

なんともご陽気な

マサイのあんちゃんGeorgeであった。

 

目の前でふと立ち止まるおかあさんライオン

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通り過ぎる親子

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ヒョウに出会えるのはめったになく、ラッキーらしい

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