人の命のために

 

2015年、私は生まれて初めて、入院した。

 

生まれて初めての手術を受けるためだ。

 

そのとき、初めて

手術後、どれだけ身体が動かないのか知った。

 

日常生活でやっていることは、ほとんどできない。

 

そのとき、私は、新しくできたばかりの病棟に入院していた。

 

力が入らない。

 

身体を曲げられない。

 

動かせない。

 

そこで、私は病院にある様々な細心の工夫が施された設備に感動する。

 

力が入らないから、部屋の扉の開閉も大変だ。

 

でも、少し引くだけで、傾斜の力を利用して

勝手に閉めることができる扉。

 

自分で起き上がれないから、自動で起こしてくれるベッド。

 

使った後に、自動で水を流して綺麗にしてくれる洗面台。

 

病院には、動けない患者さんの「欲しい」と「あったらいいな」を叶える

細心の工夫が至る所に埋め込まれていた。

 

手術してみて初めて知る不自由さ。

 

自分では、何が「欲しい」のか、何が「あったらいいな」なのか

わからない。何しろ初めての経験だ。

 

でも、そこに備え付けられている設備を使うと、

あぁ、ありがたいなぁとつくづく思うのだ。

 

病院の設備を利用するにつけ、

そこには、間違いなく

患者さんの「欲しい」と「あったらいいな」が詰まっていた。

 

星野リゾートに泊まって、そのことを思い出した。

 

星野リゾートは、病院のエンターテイメント版だと思う。

 

病院には、人の痛みを癒すための「欲しい」と「あったらいいな」が

詰まっている。

それは、人の命のための細心の工夫。

 

星野リゾートには、人のワクワクと寛ぎをつくるための「欲しい」と

「あったらいいな」が詰まっている。

きっと、それも人の命のための細心の工夫。

 

だから、人は、旅の行き先に

星野リゾートを選ぶのだ。