「今日もいい一日を」
そう言うと、母は、
「『今日もいい一日を』っていい言葉やね」と。
玄関のつきあたりの窓を開けると、
手を伸ばせば届くところに
モッコクの木がいる。
モッコクの葉は、小ぶりで厚みのある葉っぱで
表面は、つるつるしている。
母は、朝、雨戸を開けると
目の前のモッコクの葉の一つを、つるつるとなでながら
「今日もいい一日を」
と挨拶し、
夜、雨戸を閉めるときには、
「今日もいい一日でした。
明日もいい一日を」
そう言って、また
モッコクの葉を一枚、つるつるとなでてから
雨戸を閉めるのだと言う。
母のように、生きたい
そう思った。