みんなちゃんと強くなってる
92歳の叔父が倒れて
詳しい検査をしてもらうために
2度目の病院へ。
朝、叔父の家に着くと
叔母が今までの状況を話してくれる。
「うちの人、いつも以上に元気なんよ」
叔母があきれたように言う。
「いつも以上によう動くし、よう食べるし。
『もうパンパンに元気やで~』って言うて
昨夜は、止めるのも聞かんとウィスキー飲むんやで。
あきれてしまうわ~」
ふっとゆるんで、二人で笑った。
すると、そばにいた耳が少し遠い叔父が
私たちの笑い声に反応して、ふと私を見て
肩をすくめて、いたずらっぽく笑った。
あ。
叔父はわざとやってるんだ。
叔父が倒れた後、
叔母は腰が抜けて、動けなくなった。
叔母に心配をかけたくない一心で
元気に振る舞ってるんだ。
涙があふれた。
病院で検査を待っている間、
叔父はしんどそうに見えた。
検査が終わって、車に向かう途中で
叔父が
「しんどそうに見えるか?」
って聞いた。
家で待つ叔母に
しんどそうな顔は見せたくないのだろう。
「ううん、大丈夫よ」
「そうか」
薄れている記憶の中で
叔母への想いは、はっきりとある。
1年前より
みんなちゃんと強くなってる。
本当にありがとう。