母の夢

 

母は、高校生の頃、通訳になりたかった。

 

私が小学生の頃、そう話してくれた。

 

その場面は、鮮明に覚えている。

 

母は、とってもうれしそうだった。

 

なぜ、通訳になりたいと思ったのか、

英語でコミュニケーションがとれたら

どんなに素晴らしいか

 

そんなことを、すごくうれしそうに話してくれた。

 

英語でコミュニケーションがとれるって

そんなに素晴らしいことなんだ

 

母は、結局 英語の勉強をする機会もなく、

短大の家政科に進んだのだが、

その時の母の話しぶりで、

英語を使って仕事をすることは

私の夢になった。

 

母の英語を話すことへの想いは

ずっとあって、父の関係で

時々ホームステイを受け入れたり、

一、二度、英会話のCDを買って

聞いてたりしたこともあった。

 

でも、母が英語を話すことは

ほとんどなく、いつしかやめてしまった。

 

母は、私の仕事の話を楽しそうに聴いてくれながら、

何度か言ったことがあった。

 

「お母さん、生まれ変わったら、そうなりたいわ」

 

その言葉が私にはすごくつらかった。

 

「生まれ変わったら、じゃなくて

今から英語やろうよ!」

 

そう言うと、いつも

 

「英語を勉強するには、歳取り過ぎてるわ」

 

って言って、取り合わなかった。

 

そうして、何年も経ち、

私もあきらめかけていた。

 

ところが、先週の火曜日の朝、

身支度をしながら、母が何気なく

 

「お母さん、英語勉強したいなって思うんよ」

 

って言った。

 

え!?え!?ほんと!?

 

めちゃめちゃうれし~!!!

 

母のものすごい変化に驚きながらも

めちゃめちゃうれしかった。

 

しばらく、母に合いそうな英語の勉強方法を考えてみた。

 

でもふと、母が本当にしたいのは、英語を勉強することではなく

英語でコミュニケーションをとることだと気づいた。

 

一から英会話教室を探すのではなく、

誰かいい先生いないかな

 

そう思った時に、10年ほど前に

私がYMCAで英語を習っていた先生のことを思い出した。

 

日系3世のハワイの人で、

英語の教材は使わずに、

TIMEやForbesの雑誌、

TED Talksの動画や

先生の好きな本を使って

授業をしてくれた。

 

私は、その授業が好きだった。

 

先生が授業で使ってくれた

ミッチ・アルボムの「モリー先生との火曜日」や

ティナ・シーリングの「20歳のときに知っておきたかったこと」

は、今でも私のお気に入りの本になっている。

 

そうだ!

母が英語を学ぶなら、ベン先生がいい。

ベン先生に聞いてみよう。

もしかしたら、オンラインで授業をしているかもしれない。

 

もう7年以上連絡を取っていなかった。

 

私の知っているメールアドレスが

使われているのかどうかもわからない。

 

でも、イチかバチか送ってみた。

 

先生からのお返事が返ってきますように☆